2018年10月8日半導体セクターへの警鐘が少しずつ表面化

鈴木一之です。ウォール街には「ハロウィンから感謝祭までの間に株を買え」という相場格言があります。そして「(翌年の)5月に売り抜けろ」と。

秋は株価が下がりやすいことを経験的に示す一例ですが、その今年の秋相場を占う重要な1週間が始まります。

折しも中国は1週間の国慶節の休場が明けて、今日から取引が再開されます。休みの間にアジア各国はどの市場にも株価下落の大波が襲いかかっており、それを目の当たりにした中国・人民銀行は、取引再開を前にして今年3回目の預金準備率の引き下げを発表しました。

祝日の月曜日(10/8)の日本経済新聞・1面には「ドル不足で調達金利が上昇」との大きな見出しが掲載されています。

日本企業は史上最高益を更新し、米国株式市場も史上最高値を更新したばかりで、世界の金融市場にはほころびは見当たらないように見えますが、必ずしもマーケットの環境は万全ではないことが明らかにされてきました。

しかしそれにも増してこの欄に記して残しておきたいことは、半導体市場の変調を伝えるニュースです。先週の金曜日(10/5)に韓国のサムソン電子が7-9月期決算を発表したことで、その内容を伝える記事が土曜日(10/6)の日本経済新聞・朝刊に載りました。

記事によれば、サムスン電子の7-9月期の決算は、営業利益が17兆5000億ウォン(1兆7500億円)で前年比+20%の増益となったようです。2四半期ぶりに史上最高益を更新しました。

業績の牽引役は半導体部門です。営業利益・17兆ウォンのうちの13兆ウォンを半導体が稼ぎ出し、中でもDRAMは価格が過去2年間で2倍以上に上昇したことが現在の好業績につながっています。

しかし半導体市況は足元ではピークを打ち下落に転じています。NAND型フラッシュメモリは2018年初のピークからすでに3割以上も値下がりしています。

サムスン側も2019年以降に半導体市況が反転を想定している様子が記されており、これまで活発に行っていた半導体部門の設備投資を2017年、2018年をピークとして今後は減少させることを検討していることが記事中に盛り込まれています。

記事の中では半導体市場そのものが、2019年初には反転局面を迎える可能性が指摘されており、その要因として

・スマホ市場の成長鈍化
・米中貿易戦争の激化
・サーバー向け投資が活発化した結果、今後は供給量が増える局面入り

などが例示されていました。

中でも半導体産業は、「好景気→需要超過・供給不足→投資活発→供給過剰・市況下落→不況→淘汰・業界再編→供給削減→需要回復・好景気」というサイクルを長年にわたって繰り返してきました。

今またそのサイクルの転換点に差しかかっている可能性があります。いえ、すでにかなりの部分で下向きのサイクルが進行していることも考えられます。

韓国投資証券の電機アナリストは、2019年にかけてサムスン電子がDRAMの設備投資額を2割以上削減すると予想しているそうです。これによって予想されるDRAMの市況下落ペースを緩和させたい意向のようです。

半導体市場は従来の「4年サイクル」という経験則を突き破る「スーパーサイクル」に突入したと指摘され続けてきました。実際に世界の半導体市場は、2017年に+22%という高成長を記録し、そのうちメモリーは+61%も伸びました(IHSマークイット調べ)。

今後は「工場のデジタル化」、「IoT」、「自動車の電動化、コネクテッド」、「5G」などの進展により、半導体の使用される世の中の範囲が飛躍的に広がると予想されています。

それによって需要が大幅に増加して、メモリー市況が再び上昇する可能性も根強く支持されています。それでも短期的には半導体市場の実需に下押し圧力がかかることは避けられないとも見られ、場合によってはメーカーが減産に転じることも想定されます。

半導体セクターの株価は、マーケット全体が持ち直した先週、先々週もいまだ下値模索を続けていました。地合いの弱さが日に日に浮き彫りにされていた様子ですが、その背景として広がるものが次第に決算データやアナリストの分析によって表面化しつつあります。

原油市況や銅市況が世界の経済状態を一面で示唆するのとまったく同様に、半導体市況も世界経済そのものです。世の中の様子は半導体チップ、および半導体セクターの株価によって示されます。

この分野がさらに揺らぐようだと、全体相場に多少なりとも影響してくることが考えられます。その方面の視点も今年の秋相場では求められることになるので、中国市場とともに韓国・台湾市場の動きにも引き続き注意が必要になります。

以上

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